
下半身 痩せの情報満載!
アメリカのサウスカロライナ大学では、次のような研究が行われている。
ある集団にアンケート調査を行い、約五年間の食生活を調べることにしたのである。同時に、体重の変化も記入してもらった。食品は、種類が多すぎて分析も難しいため二四のグループに分け、それぞれの一日の摂取量をまとめることにした。
二年後、体重が増えた人たち、かわらなかった人たち、体重が減った人たちのそれぞれに分け、どの食品グループが体重に影響を与えたかを分析した。
結果は明快であった。男性では、甘味類、つまり糖分をとっていた人たちが圧倒的に太一方、女性では脂肪を多くとると太ることがわかったのである。体質により糖分をエネルギーとして消費しやすい人と、脂肪を消費しやすい人がいることはわかっていたが、男女でなぜ違いがでたのかはよくわからない。いずれにしても炭水化物と脂肪のとりすぎが、やはり問題なのである。
一方、こんな話もある。アメリカでは、肥満者がふえているにもかかわらず、国民の脂肪摂取量はむしろ低下している、という現象がおこっている。過去、心筋梗塞による死亡が急増し、この病気の撲滅に国をあげて取り組んできたからだ。心筋梗塞の原因は、ご存じ、コレステロールである。コレステロールの少ない食品が推奨され、結果的に国民の食習慣が大幅に低脂肪へと改善されたのである。
では低脂肪になったにもかかわらず、なぜ肥満がふえているのであろうか。ここに肥満を科学する重大な秘密があるように思われる。
この疑問に答えるための実験が、ボストンのチルドレン・ホスピタルで行われた。
グリセミック指数が小さい食事、グリセミック指数が中くらいの食事、グリセミック指数が大きい食事の三種類を用意し、太り気味の若者何人かに食べてもらったのである。三種類の食事は、脂肪と炭水化物のそれぞれについて、分量とカロリーが等しくなるように調整してあった。グリセミック指数は、先に紹介したように、食後血糖の上がる速度をあらわしたものである。三種類それぞれの具体的な数値は明記されていない。
まず全員に朝と昼の二回、「グリセミック指数が小さい食事」をとってもらった。その日の
午後、もし空腹感があれば、個人別に用意された間食(パン、チーズ、クッキー、果物、水など)を自由に食べてもらい、残った量を記録した。
一週間ののち、同じ若者たちに今度は「グリセミック指数が中くらいの食事」をしてもらった。午後からの間食は同じ要領である。
同様に三回目も行ったが、若者たちに与えられた指示は「どの食事についても、満腹感がいつも同じになるように」ということであった。
この実験から重大なことがわかった。まず食事の分量とカロリーが同じでも、グリセミック指数が大きい食事では、すぐ空腹になってしまい、間食を食べずにはいられなかったということである。つまり、間食も含めるとカロリーオーバーになってしまうのである。
また血液検査の結果から、グリセミック指数の大きい食事ほど、インシュリンの分泌量が格段に多くなっていることもわかった。従来の常識からすれば、総カロリーさえ同じであれば体に与える影響に違いはないはずだったが、その常識が屈替えされたことになる。
インシュリンのほかにも、いくつかのホルモンに違いが認められた。まずアドレナリンと成長ホルモンの二つが、「グリセミック指数の大きい食事」で上昇することがわかった。どちらも肥満を助長するホルモンである。
一方、グルカゴンというホルモンが、「グリセミック指数の小さい食事」で格段に増加して
いることもわかった。グルカゴンは血糖値が低くなると分泌されるホルモンで、体内にたまった中性脂肪を分解する働きがある。
以上をまとめれば、「グリセミック指数の大きい食事ほど太くやすく、かつ糖尿病になくやすい」ということである。実際、アメリカでは、脂肪摂取量が減少したかわりに、グリセミック指数の大きい食品が急増しているというデータもあり、肥満がふえている理由がこれでわかったことになる。
前述のアンケート調査で、男性と女性の肥満原因が異なっていたのも、グリセミック指数の違いであったかもしれない。
なお、この実験に参加してもらったのは、「太り気味」の若者たちであった。その方が、食
べる量も多く、検査値の変化がはっきりでるからである。しかし、ほかにも同じような研究が行われていて、やせていても結果は同じなのである。
「自分が太ってしまったのは、ハンバーガーを食べさせた店のせい!」
と、おかしな理由で某外食チェーン店を訴えた人がアメリカにいた。その後、裁判で企業側に無罪判決がくだされ、ニュースが世界中のメディアに配信された。
顛末裁判の顕未はともかく、ハンバーガーを食べるとほんとうに太るのか、ここまでの知識を整理する意味で少し考えておきたい。
ハンバーガーの総カロリーは各社が公表していて、次のようになっている。
A社二四人キロカロリー、B社二七五キロカロリー、C社二九〇キロカロリー、D社二五八キロカロリー、E社三四〇キロカロリー。
普通に見かけるサイズで、おおよそ二五〇キロカロリーくらいというところか。残念ながら成分までは公表されていないが、いろいろな資料を総合すると、たんぱく質四八キロカロリー、脂肪一〇七キロカロリー、炭水化物九五キロカロリー、塩分一・三グラムくらいと思われる。
やはり脂肪と炭水化物が多い。たとえば身長一六〇センチメートル、体重五六キログラムの人が事務職についていたとすると、一日の消費エネルギーは一四〇〇キロカロリーほどになる。
そのうち、脂肪の摂取量は二〇パーセント程度にするのが望ましいが、ハンバーガーを一個食ベると、それで一日にとるべき脂肪の約四〇パーセントをとってしまうことになる。動物性脂肪が多すぎるのである。
最近は、特に若い人に偏食傾向が著しい。日本では毎日、カップ麺だけを食べているという若者もいることを考えると、アメリカで毎日、ハンバーガーだけ食べているという人がいても不思議はない。もし一日に一〇個ずつハンバーガーを食べつづけたとすれば、脂肪摂取量だけで一〇〇〇キロカロリーをこえてしまう計算になる。
すでにのべたように、脂肪が体内に入ってからの代謝は複雑で、余剰なカロリーがそのまま体重増加につながるわけではないが、ハンバーガー店を訴えたアメリカ人がどれくらい太っていたか、目にうかぶ気もする。
アメリカの医学雑誌に、こんな記事がのっていた。
「八八歳の男性。特に病弱というわけではない。アルツハイマー病の診断をうけていて、少し記憶力が悪い。その男性は長年、ある強迫観念にかられ、「何か」をしないではいられないという精神状態にあった」
その「何か」とは毎日、卵を二〇個から三〇個ずつ食べることであったというのである。アルツハイマー病のため、本人自身の記憶はあまり顔くにならないが、主治医や看護師、友人などの証言から、間違いはないのだという。本人によれば、「体に良くないことは知っていたが、そうしないわけにはいかなかった」らしい。
この人に特に病気らしい病気はなく、心電図に少し変化があっただけという。コレステロールの検査値は、生涯にわたって一五〇~二〇〇SM""7(血液一デシリットル中の質量)の間であった。正常値は二二〇SM""7~以下であることから、まったくの健康なのである。
この男性に興味をいだいたアメリカのコロラド大学のある研究者は、なぜこれだけ卵を食べても大丈夫なのかを調べることにした。
研究の基本は、同じ状況を再現してみるところからはじまる。
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